子どもの予防接種
赤ちゃんは、母親から様々な免疫を引き継いで生まれてきますが、その効力は成長と共に減弱していくようになります。このような状態になると、様々な感染症にかかりやすくなっていきます。それらの病気の中には感染してしまうことで、生命に影響したり、後遺症が残ってしまうというケースもあります。
そのような病気にかからないようにあらかじめワクチンを接種していくことで罹患しにくい状態、もしくは感染しても軽微な状態に済むようにするというのが予防接種です。なおワクチンとは、ある病原体を弱めるもしくは無毒化するなどして作られた薬剤です。これを体内に注入することで、特定の病気に対してその病気にかからなかったとしても免疫がつくようにしていくというものです。
予防接種を受ける目的には、感染症に罹患するリスクが低減する、集団感染の拡大と感染症の流行を防ぐといったものがあります。
定期接種と任意接種
お子さんが受けられる予防接種は、種類がいくつもあり、また接種回数もそれぞれで異なりますが、大きく「定期接種」と「任意接種」の2つに分けられます。
定期接種
定期接種は国が「一定の年齢になったら受けるように努めなければいけない」(接種の勧奨)と規定されているワクチンです。定期接種に指定されているワクチンは、いずれも感染力が強いのが特徴です。そのため、集団での感染リスクがあるとされる病気の予防を目的としています。そのことから一番重症化しやすいとされる年齢において接種が推奨されています。費用につきましては公費負担となりますので、推奨期間に接種をすれば無料です。ちなみに推奨期間を過ぎても接種自体は可能です。ただしこの場合は、全額自己負担による接種となります。
任意接種
任意接種は国が定める法律外、推奨年齢外の予防接種という定義になります。任意となってはいるものの、決して重症化しないわけではありません。場合によっては命を落とす危険性のあるワクチンも含まれています。費用は全額自己負担となりますが、中には海外で定期接種の指定を受けているワクチンもあります。こちらもできる限り受けるようにしてください。小児が受ける定期接種と任意接種は以下の通りです。
定期予防接種の種類と回数および推奨年齢
- ヒブワクチン【不活化ワクチン】(生後2~4ヵ月の間に3回、12~17ヵ月までに1回の計4回の接種を推奨)
- 小児用肺炎球菌ワクチン【不活化ワクチン】(生後2~4ヵ月の間に3回、12~15ヵ月までに1回の計4回接種を推奨)
- B型肝炎ワクチン【不活化ワクチン】(生後2~3ヵ月の間に2回、7~8ヵ月までに1回の計3回接種を推奨)
- ロタウイルスワクチン(1価もしくは5価)【生ワクチン】(1価は計2回、5価は計3回の接種:生後6週から接種可能で2(3)回目は1(2)回目の接種から4週間以上開ける。1価は生後24週目まで、5価は生後32週目までに完了する)
- 4種混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)【不活化ワクチン】(生後3ヵ月~2歳の誕生日前までに計4回の接種を推奨)または、3種混合ワクチン【不活化ワクチン】(DPT:ジフテリア・百日せき・破傷風)とポリオ【不活化ワクチン】(生後3ヵ月~2歳の誕生日前までに計4回の接種を推奨)
- 2種混合ワクチン(DT:ジフテリア・破傷風)【不活化ワクチン】(11~13歳未満の間に1回接種)
- 麻しん(はしか)・風しん混合ワクチン(MR)【生ワクチン】(1歳~2歳の誕生日前に1回、5歳~7歳の誕生日前までに1回の接種を推奨)
- 水痘(水ぼうそう)ワクチン【生ワクチン】(生後12~15ヵ月で1回、その後6~12ヵ月開けて1回の計2回を推奨)
- 日本脳炎ワクチン【不活化ワクチン】(3歳の間に2回、4歳の間に1回、9~12歳の間に1回の計4回を推奨)
- BCGワクチン【生ワクチン】(5~8か月未満の間に1回の接種を推奨)
任意接種の種類と回数
- おたふくかぜワクチン【生ワクチン】(計2回:1歳過ぎたら早期に接種、2回目は5歳以上7歳未満の間に接種する)
- インフルエンザワクチン【不活化ワクチン】(13歳未満は計2回:生後6ヵ月以降の全年齢が対象で、毎年流行前の10~11月に接種する。1回目と2回目の間隔は2~4週間ほど空ける)
大人の予防接種
当院では成人向けの予防接種として、インフルエンザや肺炎球菌、帯状疱疹などのワクチン接種を行っています。その他のワクチン接種を希望される場合は、個別にお申し出ください。
ワクチンとは、感染症の原因でもある細菌やウイルスなどの病原体を無毒化、あるいは弱めて作られた薬剤で、これを体内に注入(接種)することで、ある病気に対する免疫がつくようになります。その結果、特定の感染症にかかりにくくなるほか、万一感染して発症しまった場合でも重症化するリスクが避けられるようになります。
インフルエンザワクチン
予防対策が様々あるとされるインフルエンザですが、その中でも最も有効と考えられているのがインフルエンザワクチンの接種です。同ワクチンは接種回数が年齢によって異なります(13歳未満は2回、13歳以上は1回)。なお、2回接種する場合は1回目の接種を終えてから2~4週間ほどの間隔で行うようにしてください。
またインフルエンザワクチンは接種する時期にも注意して受けるようにしてください。日本でインフルエンザは毎年12月~翌3月頃の期間に流行します。さらに同ワクチンの持続効果が約5ヵ月間、接種後に効力を発揮するまで約2週間かかることなどを考慮すると11月中旬くらいまでに接種されることが望まれます。
なおインフルエンザウイルスは、毎年少しずつ特徴を変えて違うタイプが流行することから、去年と同じワクチンが有効だということはありません。従って、今後もインフルエンザの発症をできるだけ予防したいという場合は、毎年接種するようにしてください。
肺炎球菌ワクチン
細菌やウイルスによる感染、あるいは薬剤やアレルギーといったことが原因で肺が炎症し、そのことによって様々な症状(発熱、激しいせき、たん、胸痛、息切れ など)が起きるのが肺炎です。同疾患は高齢者の方や基礎疾患をお持ちの方など免疫力が低下している方に発症しやすいのも特徴で、一度罹患してしまうと治りにくいという特徴があります。
先にも述べたように肺炎は様々なことが原因で発症しますが、高齢者がかかりやすい肺炎の原因は肺炎球菌です。なお肺炎は日本人の死因第5位(2019年(令和元年)厚生労働省「人口動態統計」より)の疾患でもあります。
このようなことから多くの自治体で高齢者の肺炎球菌ワクチンの接種は公費が一部助成となっているのです。対象となる方はできるだけ接種するようにしてください。また対象年齢以外の方であっても全額自己負担となりますが、接種自体は可能です。
この肺炎球菌ワクチンの接種によって、肺炎球菌による肺炎にかかりにくくするほか、万一感染した場合でも重症化するリスクが低減されるようになります。なお肺炎球菌ワクチン接種による注意点ですが、接種後5年以内に再接種を行うと、注射部位の痛みが強く出ることがあります。再接種を希望される方は、5年以上の間隔を空けてください。
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した方(水ぼうそう)のみが発症する病気です。多くの方は、小児の頃に水ぼうそうに発症し、すでに治癒したと思われているかもしれません。ただ同ウイルスというのは、体内に潜伏したままの状態になっています。そのため、免疫力が低下した状態(加齢、ストレス、過労 など)になると、それまで神経に潜んでいた同ウイルスは活性化するようになります。すると、体の一部でピリピリした痛みやかゆみといった症状が出るようになって、数日が経過するようになるとその部位の皮膚に赤み、あるいは小水泡が帯状に見られるようになります。
帯状疱疹は50歳以上になると発症率が高くなるのが特徴であるため、このワクチンは50歳以上ですでに水痘や帯状疱疹を発症した方を対象としています。